アクチュアリーのキャリアアップ


毎年2月は、アクチュアリー試験の合格発表がありますので、受験された方々にとってドキドキ・ワクワクする月ですね。また、年度末に向けて、異動・昇進や転職など、アクチュアリーを含めたキャリア・アップについて、色々と考えを巡らせる時期のようにも感じます。

そこで、今回のコラムでは、筆者自身の経験を踏まえて、保険会社にお勤めの若手・中堅アクチュアリーの方々に向けて、キャリア・アップを目指す際の心構えや留意点などを紹介したいと思います。

なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、また、決して転職を勧めるものではございませんので、その点を何卒お含みおきください。

1.自分自身のキャリアの棚卸し

たとえ転職経験がなくとも、勤務先での所属部署や役職、従事された業務内容など、ご自身のこれまでのキャリアを棚卸しすることは、社内異動などの上司面談との準備の意味でも有効と思われます。
特に、社外の人々にもアピールできるよう、守秘義務違反にならない程度に、ご自身のパフォーマンスについて、特筆すべき点を幾つかピックアップしておけば、転職を含めた様々なキャリア・アップ時の面接ネタになることでしょう。

なお、アクチュアリーとしての業務経験はもちろんですが、例えば、アクチュアリー以外にも注力したこと(例.マネジャーとして部下○○名を育成・指導した。その結果、チーム全体として△△の成果を出せたなど)も整理しておくと、面接官からすれば頼もしい存在と映ることでしょう。

2.ツールの更新

転職時、特に、外資系の会社への転職を検討される際は、いわゆる“転職3点セット”である、「履歴書」、「職務経歴書」そして「英文レジュメ」を準備することが不可欠です。
このうち、「履歴書」については、文房具売り場などで所定の様式を入手して、これまでの学歴および職歴などを淡々と記す感じです。

また、「職務経歴書」については、特段の様式はないように思えますが、例えば、日付(いつからいつまで)、勤務先、所属部署、役職、業務内容などを時系列で淡々と記す感じです。
一方、「英文レジュメ」は外資系の会社ならではの必須アイテムであり、例えば、“少額短期保険業者へコンサルティング業務を実施して、新商品開発のアドバイスに専念した”といった業務内容を英語でどのように表記するかは、なかなか悩ましいところです。

最近では、英語をはじめとする翻訳ソフト(例.DeepLなど)が充実していますので、それほど英訳作業に負荷がかからないかもしれません。例えば、金融庁ホームページの“保険業法(平成七年法律第百五号)”をご覧いただければ、
“第百十六条 (責任準備金)Article 116 (Policy Reserve)
1 保険会社は、毎決算期において、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てなければならない。(1) An Insurance Company shall, for each accounting period, set aside a certain amount of money as a policy reserve to prepare for future performance of obligations under its insurance contracts. ”
という条文で、「責任準備金を積み立てる」⇔「set aside a certain amount of money as a policy reserve」という表現が学べますので、当該ホームページを利用しながら、英文レジュメを作成されるとよいでしょう。

なお、筆者が昔、外資系企業に勤務していた際は、「責任準備金を積み立てる」⇔「establish a policy reserve」という表現を使用しておりました。

3.転職ウェブサイト

例えば、検索サイトで、“アクチュアリー”、“転職”、“ヘッドハンター”などのキーワードで検索してみると、様々な転職ウェブサイトがヒットすると思います。
筆者の経験では、南氏が経営されている“ビズリーチ”がかなり使い勝手が良かったように記憶しております。

実際、プロフィールを記入して、求人を待っていると、一流のヘッドハンターから様々なコンタクトをいただけて、さながら“価格.com”のような比較サイトに類似したシステムになっています。

ちなみに、筆者が、アクペディアコラムを運営されている、VRPパートナーズの大谷様と知り合うきっかけとなったのも、この“ビズリーチ”がご縁でした。
もちろん、アクチュアリーの転職エージェントとしては、業界でも実績豊富なVRPパートナーズに、直接、ご連絡差し上げる方が早いかも知れません。

4.ヘッドハンターとの交流

ビジネスとしての繋がりだけではなく、友人・知人の一人として、ヘッドハンターの方々と交流されることは、とても有意義なように思えます。
実際、ヘッドハンター自身が保険会社の勤務経験があり、交流しながら会社内での振る舞いなどにもアドバイスをいただけるチャンスも十分あります。
また、外国人のヘッドハンターとやりとりすることで、ある意味、“無償で”英語学習の機会を得ることも十分可能だと思います。

5.3つのビジョン

転職を含めたご自身のキャリアビジョンを考える際、少なくとも“3つのビジョン”を常に念頭に置いておくことが重要だと思います。

この“3つのビジョン”としては、例えば、
1)社内ならこのポスト
2)転職するならこの会社・ポスト
3)定年時のポスト
という具合に、3つの視点が考えられます。

特に、外資系企業で外国の方々と一緒に仕事をする場合には、プレゼンテーション資料などで、やたらと「3」が登場(例.3つの論点、3つの理由など)することに気が付かれると思います。4つのビジョン(起・承・転・結)ではなく、3つのビジョン(ホップ・ステップ・ジャンプ)で考える習慣を身に着けることは、グローバルな仕事をすすめる上で必要不可欠な要素といえるでしょう。

6.アクチュアリー以外の強み

筆者が大学生の折、言語学の先生が、やたらと、“日本語、英語以外にもう1つ言語をマスターすれば、世界が一気に広がるよ!”というアドバイスをされていたのがとても印象的でした。

アクチュアリーに例えて言えば、数学的素養、正会員以外にもう1つのスキル:
1)ERMなどのリスク管理スキル
2)ビッグデータなどのデータ分析スキル
3)ビジネス英語力
4)ITスキル
5)Excelのマクロスキル
等々があれば有利なアクチュアリー人生が歩めることでしょう。

7.目的ではなく手段として

恐らく、このコラムをご覧になっている方々の多くは、アクチュアリー試験受験生と思われますので、アクチュアリー正会員になること自体が『目的』と思われます。

しかし、専門資格取得は、本来、何かを実現するための『手段』に過ぎず、例えば、人命救助に専念したいから医師免許を取得するとか、国際会計基準の本格適用を睨んで、(米国)公認会計士資格を取得するといった具合です。

また、アクチュアリー職を目指して転職する場合でも、面接時に、『君はアクチュアリー試験を受験しているようだが、アクチュアリー正会員になって何がやりたいの?』と聞かれた場合でも、“目的ではなく手段として”アクチュアリー正会員を目指していれば、即答できると思います。

いかがでしたか。2022年がスタートしましたが、今年は、改正告示48号の施行、アクチュアリー試験のCBT方式導入、経済価値ベースのソルベンシー規制に関するマイルストーンなど、アクチュアリーにとって大きな環境変化の年になりそうですね。今回のコラムが皆さまのキャリア・アップの参考になれば幸いです。

(ペンネーム:活用算方)

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