確定拠出年金(DC)法令解釈 Vol3 用語の定義(後編)


前回に続いて第2条の解説をします。法令原文については、前回を参照ください。

https://www.vrp-p.jp/acpedia/?p=3958

⑤ 確定拠出年金運営管理業とは(法第2条第7項)

企業型年金は、基本的には、事業主が実施する制度になりますが、専門的知見が問われたり、システム上の対応が必要であったりすることから、法の中で、制限が必要な業務を「確定拠出年金運営管理業」と定義しています。

いわゆる「運営管理機関」が実施している業務について、この条項で定義される「運営管理業務」と「運営管理業務に付随する業務」に分かれます。

そして、「運営管理業務」も「運用関連業務」と「記録関連業務」にわかれています。

第2条第7項第1号が記録関連業務の定義となります。

記録(レコード)を保存する(キープ)業務が含まれていることから、記録関連業務のことを、レコードキーピング(RK)業務といったりします。

RK業務は以下の3つからなります。

a.加入者等の氏名、住所、個人別管理資産額その他の加入者等に関する事項の記録、保存及び通知

b.加入者等が行った運用の指図の取りまとめ及びその内容の資産管理機関又は連合会への通知

c.給付を受ける権利の裁定

記録関連運営機関のことを以下RK(レコードキーパーの略)と略します。

また、第2条第7項第2号が運用関連業務の定義となります。

運用関連業務は、以下の2つになります。

a.運用の方法の選定及び提示

b.運用の方法に係る情報の提供

からなります。

加入者が運用をする、という場合、通常「運用商品」と呼びますが、法令上の表現はすべて「運用の方法」となっています。

 

そして、運営管理業務に当たらないとされている業務が、以下になります。

ア. 国基連が行う個人型年金加入者の資格の確認に係る業務、中小事業主掛金を拠出するときの限度額管理業務(則第1条)

イ. 資産の運用に関する資料の提供、企業型年金規約の作成または、変更に関する相談、助言その他運営管理業務の実施に必要な業務

この、イを運営管理業務の付随業務と呼びます。

特に運営管理業務については、「業務委託する」、というところで、運営管理業務の再々委託は不可、など、決まりがあります。

何が運営管理業務なのか、をしっかり理解をしていないと、いろいろなサービスを展開していくときに法令違反になりかねないので、注意が必要です。

⑥  加入者・運用指図者の定義(法第2条第8項~11項)

企業型年金加入者、企業型年金運用指図者、個人型年金加入者、個人型年金運用指図者について、言葉の定義をしている条項です。

どういった時にその資格を取得し、どういった時に資格を喪失するのかについては、後の条文で細かく規定されていますのでここでの説明は割愛します。

ざっくりのイメージでいうと、加入者は「拠出をして運用の指図をする」運用指図者は「拠出をしないで運用の指図をする」という感じで良いと思います。

「運用の指図を行う」のイメージがまだここではわかないと思いますので簡単に説明します。

基本的には運用関連運営管理機関が、運用商品を選定してラインナップを加入者の皆さんに提示します。ここで運用商品は主に、預金商品、保険商品、投資信託商品などからラインナップが組まれます。

加入者が「運用の指図を行う」といっているのは、毎月拠出したお金を、どの商品にどれだけ配分して購入するか、もしくは既に保有している運用商品を売却して別の運用商品を購入する、ための指図を、「運用の指図」と呼んでいます。一般にWEBでこういった運用の指図ができるようになっていますし、WEB以外にも帳票に記入して運用指図すること、コールセンターを利用し口頭でオペレーターに伝えて運用指図をすることもあります。

⑦ 個人別管理資産の定義(法第2条第12項~13項)

個人別管理資産額については、記録関連業務の定義でも登場したキーワードで、RKは、加入者等の個人別管理資産額の記録、保存及び通知を業務として担います。第12項が、個人別管理資産とは何か、という定義で、第13項が個人別管理資産の定義となります。

「個人別管理資産」とは、「加入者であった者に支給する給付に充てるべきものとして、一の企業型年金又は個人型年金において積み立てられている資産をいう。」とあることから、もっぱら給付金として支給するための資産であることがわかります。

そして、「個人別管理資産」が具体的に資産移換の際の実際の金額であったり、「個人別管理資産の通知」(法第27条)に表示する具体的な運用商品ごとの金額、となります。「個人別管理資産額」の定義をみると、計算基準日における以下の金額の合計となっています。

① 「その者の個人別管理資産に係る運用商品ごとの当該運用商品におけるその者の持分額」-「手数料、報酬その他の当該運用の方法に係る契約の変更又は解除に要する費用」の運用商品ごとの合計額(令第1条第1項第1号)

② 「拠出後の事業主掛金(加入者掛金、中小事業主掛金含む)の拠出後で運用指図前の金額」(令第1条第1項第2号イ)

③ 「資産を売却し、移換をする前の資金または給付金や手数料等を支払われる前の資金」(令第1条第1項第2号ロ)

まずは、ざっとイメージをつかんでいただけたらと思います。上記①は、運用商品を保有している状態の場合においては、商品ごとの数量とそれに計算基準日時点の基準価額をかけたもの(=一般に時価評価額)から解約時にかかるであろう手数料を控除されたものとなっています。したがって、一般的な時価評価額より低くなるイメージです。

実際にDC制度に事業主が掛金を拠出する場合、信託銀行に対して掛金分の運用商品を購入しようとするわけですが、拠出後から、実際に購入して、個人毎のDC資産として認識されるまでにはタイムラグがあります。しかし、この令第1条第1項第2号イによって、個人のDC前の口座に反映される前のお金であっても、企業が拠出した後であれば、それはもう「個人別管理資産額」に含めよ、という意味になっています。

同様に、個人が移換をしたり、給付金として受け取るために、売却を指図が出されたとしても、実際に移換したり、給付金が支払われるまでは、個人別管理資産額として、認識しなければならない、ということを指しています。

第2条についての解説は以上です。

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