気になるニュース(2023年11月)


10月に引き続き11月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。
また、スケジュールの関係で、10月下旬のニュースが含まれている場合がありますことを何卒ご容赦ください。

1.生命保険の月(その1)

伝統的な生命保険会社で勤務経験のある方は『11月』は7月と並んで「重要な月」であり、社内的にも営業部門を中心に『重大月』などと呼称されることもあるようで、営業成績や見込客開拓状況といった花形部門としての“お披露目の月”と言えるでしょう。
また、生命保険業界でも11月を「生命保険の月」と呼んでいるようで、これは、第二次世界大戦後にGHQの保険担当官が生命保険協会に対して「生命保険の奨励運動」を提案されたことに起因している模様です。
素朴な疑問として、何故11月なの?と思われるかもしれませんが、GHQが提案された当時は、稲作農家が多く、米の収穫と納入を終えて年に1度の代金を受け取るのが11月であり、1年の中で最も豊かな月であったという背景があるようです。
したがって、当時の保険料払込方法は“年払”が多く、簡易生命保険の“月払”と、上手く棲み分けができていたのかもしれません。

なお、“米国でも9月が同様の月間となっているものの、2004年のスタートで歴史は浅い”という点について、GHQ提案が保険大国である米国では長らく採用されてこなかった理由も知りたいところですね。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=76720?site=nli

2.生命保険の月(その2)

『11月は“生命保険の月”』で始まるニュースリリースが11月1日に出ました。
特に、同リリースでは、“生命保険協会が生命保険を広く普及させるために制定したである11月にちなんで(中略)『がん予防に関する意識調査』を実施”とありますので、営業強化だけでなく生命保険普及を図る時期と捉えている点が特徴的です。
また、健康増進型保険として“保険加入後に喫煙を克服すると保険料が安くなる保険”が存在していますが、実に4割以上の方々が加入したい意向を持たれている点も大いに注目されますね。

加入時の健康状態だけではなく、加入後の被保険者の努力で保険料が下がる仕組みを設けることで、お客様と保険会社との間でwin-winの関係を構築することで、継続率の向上も期待できそうです。
https://www.himawari-life.co.jp/-/media/himawari/files/company/news/2023/a-01-2023-11-01.pdf

3.130年払い!?

乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となった痛ましい「北海道知床遊覧船事故」について、被告の社長側から和解案が提示されました。
しかし、その和解案が現実離れしているようでして、実に130年にわたって被害者の両親に毎月5万円、総額計8千万円を支払うというものです。単純計算で完済に130年以上かかるため、常軌を逸した提案と言われても仕方がないように思います。
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2023/11/16/kiji/20231116s00042000349000c.html

https://mainichi.jp/articles/20231116/k00/00m/040/215000c

ちなみに、何かと話題の『Yahoo!コメント』で秀逸なコメントがあり、具体的には、“保険会社はどこにいったのか?(被告の社長が)保険に入っているので被害者への支払いは大丈夫と言ってなかった?こんなふざけた和解案はまとまらないだろうから、会社の財産を差し押さえした方が良い。他の会社も(被告の会社財産を)持っている記憶があるので、裁判で圧力をかけて資金を引っ張れる弁護士に依頼すべきだろう。”

まさにおっしゃる通りですね!!

4.50年払い!?

広島銀行など一部の地銀で最長50年の住宅ローンが発売されたことを以前の当コラムでご紹介いたしましたが、いわゆる『ネット銀行』の世界でも同様の年数の超長期の住宅ローン競争が激しくなっている模様です。
今でこそ、銀行窓販など、銀行が保険代理店として生命保険も販売することが当たり前になっていますが、住宅ローンに付帯される「団体保険(団体信用生命保険)」でも、個人保険に準じた様々な「特約」が付保されることも多く、逆に、個人保険の販売にも影響が出る恐れも気になるところです。

ただし、残念ながら、若者を中心とした、「家離れ」、「車離れ」、「酒離れ」といった昭和時代のライフスタイルと大きく様変わりしていますので、銀行はもちろんのこと、保険会社にとっても、このライフスタイルの変化をいち早くつかむことが、営業戦略上も重要な課題の1つであるように思います。
“ワンストップ・サービス”、“金融総合サービス”など、ひと昔前に聞いたことのあるフレーズが、蘇る日もそう遠くないかもしれませんね。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0513M0V01C23A1000000/

5.新契約が「採算割れ」!?

いよいよESR(経済価値ベースのソルベンシー規制)が2026年3月期決算から導入されますが、MCEV、IFSRなどと同様に、「保険契約の価値」を将来キャッシュフローおよび割引率などを用いて計測することが主流になりつつある雰囲気です。
特に、営業保険料水準を策定する際に行う「商品毎収益検証」では、PM(プロフィット・マージン)などの収益指標を満たすように水準設定がなされることが多いのですが、実際の収益を事後的に計測することも、料率改定や販売停止など、PDCAサイクルを上手く回していくリスク管理の観点からも重要です。
また、「保有契約価値」や「新契約価値」と呼ばれる数値は、単に、営業保険料水準の妥当性という観点だけでなく、会社そのものの価値、特に、上場企業であればその会社への投資価値有無を判断する、極めて重要な指標と言えるでしょう。

会見での「主計部長コメント」では、「システム開発に加えて、計算から作成までのプロセス全体のなかでリスクを洗い上げて必要な体制を構築する」と説明された模様です。(役員でなく「部長」が会見でコメントされること自体、かなり稀有な気がします。)
なお、記事を見た知人アクチュアリーからの、“ヒューマンエラー不可避的だが、そもそもエラー発見に至ったプロセス(例.ESR態勢構築中の検証機能強化で発見されたなど)に興味がある。”というコメントが、個人的にはとても印象的でした。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB088200Y3A101C2000000/

6.Amazon の保険

2030年に導入予定の「第6世代移動通信システム(=6G)」を待たずとも、既に、自動運転技術や生成AIなど、身の回りにIT技術の進化が相当のスピードで日々進化しています。(機会があれば当コラムも生成AIなどで作成してみたいところですが。)
また、10年くらい前に某再保険会社が元受保険会社向けに行ったセミナーでは、そう遠くないうちに、GAFAなどの超巨大企業がIT技術を駆使して「保険ビジネス」に参入する可能性が十分あるという内容でした。
当該セミナーの予言通り(!?)かもしれませんが、少額短期保険業者が募集代理店としてAmazonのペット保険販売をスタートされる模様です。

特に、ニュースリリース中、“1年自動更新型であるものの保険料上昇に配慮して一生加入し続けることができる”ことを謳い文句にしている点が興味深く感じました。実際、個人保険(=ひと保険!)では、“保険料が一生上がりません!”をキャッチフレーズにして「終身型」保険を販売しているためです。
もっとも、わんちゃんやねこちゃんの「一生」は、ひとの「一生」に比べると、それほど長くはないという事情が背景にあるのかもしれません。
再保険会社の予言通り、「ペット保険」から「ひと保険」が販売される日は、そう遠くないかもしれませんね。
https://www.aioinissaydowa.co.jp/corporate/about/news/pdf/2023/news_2023110101240.pdf

7.債券含み損

日銀の政策変更により国債利回りなどの市場金利が上昇基調にありますが、アクチュアリー試験の教科書を持ち出すまでもなく、金利上昇で保有債券などが含み損を抱えることとなります。
もちろん、債券であれば満期(償還)まで保有し続ければ「額面」で償還されるため、当該含み損は解消されますが、生命保険契約の解約で保有資産を現金化しなければならない場合などには、当該含み損が「実現」してしまいます。
地方銀行も大量の債券を保有しており、一説には、外国債券も少なくなく、金利リスクに加えて為替リスクも抱え込む悩ましい構造にある模様です。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB147BM0U3A111C2000000/

8.デング熱

21世紀の世界共通テーマ「環境」と言われますが、気候変動による自然災害などの影響がますます深刻になっています。
特に、気候変動による気温上昇と雨期の長期化は、『デング熱を媒介する蚊』にとって理想的な繁殖状況をもたらしたため、過去最悪となるデング熱発生が生じた模様です。
なお、当該疾病による死者は、今月12日時点で1,476人であり、バングラデシュの人口(≒1.7億人:2021年)からみれば多くないようにも見えますが、昨年の死者が281人であったため、5倍程度のペースで進行しているのが恐ろしい感じです。

ちなみに、新型コロナと同様に、デング熱に感染しても大
半の人は症状が出ないようでして、このため、報告数よもはるかに多い患者数が出ている可能性もあるようです。
https://jp.reuters.com/article/bangladesh-disease-dengue-idJPKBN329093

9.PTA会費の返還求め提訴

『とある会費』として毎月230円が6年余りにわたって給与天引きされている場合、皆さんならどうしますか?
某学校の教諭が当該引去り分の返還を求める訴訟を起こしたようですが、その『とある会費』とは、なんと『PTA会費』でした。
これに対し、元PTA会長と校長が、“教諭はこの間、会費が明記された給与明細書を毎月受け取りながら異議を唱えなかった”と反論された模様です。生命保険金などの受給権であれば請求時効3年という事例もありますので、被告側からすれば、6年間何も言わなかったのになあ。。。というのが本音かもしれません。
なお、「そもそも入会申込書がない」、「本人同意がない」といった様々な意見が他の教諭からも出されているようで、極めつけは、某40代の高校教諭曰く、“学校のエアコン設置費や管理費にPTA会費を充てている例もあり、学校に必要なものは公費でまかなうべきだ。”との御主張には激しく同意できますね。

ちなみに、記事中、“教育の課題が多岐にわたる中、学校だけに任せるのではなく、家庭が一緒になって解決していこうというのがPTA。”というくだりがあります。裁判員裁判制度と同様、一般市民にも参画させることで、よりよい制度設計ができる面はあるものの、そもそも、何のために『税金』や『授業料』を払っているのかという疑問は燻り続けます。
また、記事中、“PTAは、戦前を反省して、民主的な教育で平和な日本をつくりたいという思いから全国に広がった。”というくだりもありますが、この「民主的な」を持ち出す論法は、某国営放送の「受信料制度」(≒民主主義のために受信料支払義務あり)との類似性を禁じえません。
https://373news.com/_news/storyid/185576/

10.ブラック・ジャック新作

「ブラック・ジャック」といえば昭和を代表する国民的漫画ですが、作者の故・手塚治虫氏が医学部在学中から描き始めて、繊細な描写など医療従事者でなければ完成しなかったレベルの超大作ですね。
幸い、今年誕生50周年を迎えた作品ですが、同氏の長男が中心となったプロジェクトメンバーが、AIを駆使したシナリオやキャラクターを用いて新作が発表されました。
漫画ファンとしては、サザエさんやちびまる子ちゃんなど、原作者の没後にも、若手漫画家達の協力で次々に作品を出し続けることは、本当にありがたい限りなのですが、果たして、手放しで喜べるのだろうか?という、一抹の不安がよぎってしまいます。

実際、すでにNHKニュースなどでもAIによる原稿の読み上げがスタートしており、将来的にも、アナウンサーや俳優など個性的な『人物』の『声』『容姿』『動き』に限定すれば、十分にAIで代替可能な時代が到来しています。
進化が激し過ぎると『AI俳優』のスキャンダルなどが『AI写真週刊誌』を賑わせて、フェイク・ニュースが益々増加するような時代が訪れる日も、そう遠くないかもしれません。
漫画家やアシスタントの仕事が奪われてしまうと、かえって、我が国を代表する『漫画文化』が衰退する可能性も孕んでいるため、慎重なルール作りが必要であるように思われます。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF200P40Q3A121C2000000/

いかがでしたか。今月25日(土)は、テレビ朝日系列で「富士山噴火」の特番が「タモリステーション」として放送されました。(https://post.tv-asahi.co.jp/post-234501/)小笠原諸島近辺での新島出現など「富士山噴火」の予兆イベントも気になります。日ごろから防災意識を高めて、様々な防災グッズ(例.水、食料、懐中電灯、スマホ充電器など)を揃えておくことが大切ですね。

 

(ペンネーム:活用算方)

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