公認会計士が食えないというのは本当?
結論からいえば、「公認会計士が食えない」というのは事実ではありません。
公認会計士という国家資格は依然として高い専門性と信頼性を持ち、企業からの需要も根強く存在しています。
特にFAS(Financial Advisory Services)領域やM&A、事業再生といった分野では、監査経験を活かして年収アップや裁量あるポジションを実現している事例も多く見られます。
にもかかわらず、「会計士はもう食えない」「資格を取っても将来が不安」と感じてしまう方が増えているのも事実です。特に監査法人で働く若手会計士の中には、キャリアの選択肢が見えず、漠然とした不安を抱えている方も少なくありません。
SNSや一部のメディアでは、「公認会計士=安定」という従来のイメージとは異なり、「競争が激化している」「稼げない」といったネガティブな声が目立つようになってきました。たしかに、独立開業後に顧客を獲得できず収入が安定しないケースや、監査以外の分野で評価されづらいといった課題も存在します。
しかし、そうした現実がある一方で、会計士として「どうキャリアを築くか」「どの分野で価値を発揮するか」によって、活躍の場と報酬は大きく変わります。問題は「食えない」ことではなく、「自分の強みをどう活かせばよいか」が見えていないことにあるのです。
公認会計士は食えないといわれる理由
「公認会計士は食えない」といわれる背景には、いくつかの社会的・構造的な要因があります。資格としての価値が低いわけではなく、一時的な制度の変化や職業イメージの変化が原因で、そうした印象が広がってしまった面があるのです。ここでは、その代表的な理由について詳しく見ていきましょう。
試験制度の変更で合格者が増えた時期があったため
公認会計士が「食えない」と語られるようになった背景の一つに、試験制度の改革による就職難の時期があります。2006年、公認会計士試験が短答式と論文式に分かれ、年間2回実施されるようになったことで、合格者が急増しました。
この結果、2007年から2010年ごろにかけては、合格者数が年間4,000人を超えた一方で、リーマンショック等の影響もあり、監査法人側の採用枠が追いつかず、「合格しても監査法人に就職できない」という状況が生まれました。
この影響で、「会計士=資格を取っても就職できない」「結局食えない」といったイメージが拡散されました。現在では試験制度も見直され、合格者数は2,000人台に落ち着いていますが、当時の記憶や報道の影響が根強く残っているため、未だに「食えない」という印象を持つ方が一定数いるのが実情です。
AIに仕事が奪われるという論文が発表されたため
もう一つの理由として、AI(人工知能)による職業の代替可能性に関する議論があります。2013年、オックスフォード大学の研究者によって発表された論文「The Future of Employment(雇用の未来)」では、会計監査の業務が将来的に自動化の対象となるとされ、多くの会計士に不安が広がりました。2015年のオックスフォード大学と野村研究所との共同研究でも、AIによって代替される可能性がある職種として「会計監査係員」がリストアップされています。
参考:日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に
確かに、定型的なデータ処理や仕訳業務はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)によって効率化が進んでいます。しかし、判断力や対人関係能力、ビジネス全体を俯瞰して戦略的な提案を行う力は、AIに代替されにくい分野です。とくにFASやM&A、事業再生、フォレンジック調査などにおいては、会計士としての分析力や実務経験が強く求められるため、むしろ活躍の場は広がっているともいえます。
独立開業をした際に収入が安定しない可能性があるため
会計士の中には、監査法人で経験を積んだ後、独立を目指す方も多くいます。しかし、独立直後は顧客ゼロからのスタートとなるため、軌道に乗るまでに時間がかかり、収入が不安定になるリスクがあります。また、競争も激しく、税理士業務と兼ねて幅を広げる努力が必要です。
独立開業に失敗し、監査法人や企業への再就職を余儀なくされる例も少なくないため、「結局食えないのでは」という不安につながることもあります。ただし、これは独立に限った話であり、企業内での活躍やFAS領域への転身など、会計士としてのキャリアを活かせる選択肢は数多く存在します。
”食える”公認会計士の特徴

公認会計士は「食えない」と言われることもありますが、実際には安定した収入や高い年収を実現している方も数多く存在します。その違いは、単に資格の有無ではなく、「どのようにキャリアを構築しているか」にあります。ここでは、実際に“食えている”会計士に共通する特徴を見ていきましょう。
大手企業・大手監査法人に勤務している
安定した収入と待遇を得やすいのが、大手監査法人や上場企業に勤務する会計士です。特にBig4と呼ばれる4大会計事務所では、一定の年次を経れば年収1,000万円超も現実的であり、社内異動やFAS(Financial Advisory Services)部門へのキャリアチェンジといった道も開かれています。また、監査業務に限らず、IFRS対応、内部統制、IPO支援など高付加価値業務に携わることで、市場価値の高いキャリアを築くことが可能です。
特定の分野に精通している
監査や会計だけでなく、FAS領域、事業再生、フォレンジック、不正調査、税務、内部監査といった“専門性の高い”分野に特化している会計士は、市場ニーズが高く、高年収を実現しやすい傾向にあります。特にM&A支援やバリュエーションなどでは、会計士資格に加えて実務経験があることで即戦力として評価され、独立系FASやコンサルファームへの転職でも高い需要があります。
幅広い業務に対応できる
一方で、特定の分野に偏ることなく、柔軟に業務の幅を広げられる会計士も「食える」存在です。たとえば、監査だけでなく財務アドバイザリー、内部統制構築、経理・財務の高度化、IPO支援までカバーできる人材は、企業からの引き合いも強くなります。特に中堅・中小企業では、会計士に対して“なんでも相談できる”パートナーを求める傾向があるため、ジェネラリストとしての力が発揮される場面も多くなっています。
“食える”公認会計士になるためには?
今後のキャリアに漠然とした不安を抱えている方も、「自分は“食える会計士”になれるのだろうか」と悩むかもしれません。しかし、必要なのは特別な才能ではなく、「どのようにスキルを磨き、どんな方向に進んでいくか」という明確な方針と行動です。ここでは、“食える”公認会計士になるために重要な3つの視点を解説します。
継続的にスキルアップをする
会計士として生き残るためには、資格を取得した後も学び続ける姿勢が欠かせません。会計基準の変化や新しい法令対応はもちろんのこと、ExcelやBIツールなどの業務効率化スキル、英語力、さらにはプレゼンや交渉といったコミュニケーションスキルも求められます。実務に必要なスキルは常に変化しているため、勉強を怠らない姿勢が長期的な信頼と収入につながります。
得意分野を見つけて専門性を高める
「会計士は何でもできる」と思われがちですが、市場で評価されるのは「何が得意か」が明確な人です。たとえばM&Aのデューデリジェンスに特化した人材はFAS系ファームで重宝されますし、内部統制やガバナンスに強い人は事業会社のCFO候補としても活躍のチャンスがあります。幅広く経験を積む中で、自分が面白いと思える分野・評価されやすい分野を見極め、専門性を磨くことがキャリアの安定化と差別化に直結します。
キャリアパスに沿った転職をする
“食える”公認会計士になるためには、自分のライフプランと志向に合ったキャリアパスを描くことが不可欠です。現職に留まり続けることが最善とは限らず、FAS(Financial Advisory Services)やアドバイザリー業務に進む、事業会社で経営に近い立場を目指すなど、将来の選択肢を視野に入れた転職が重要になります。特に監査法人ではクライアントへのコンサル業務に制約があることから、「もっと深く企業支援に関わりたい」と感じた方にとっては、転職によるキャリアの展開が有効です。
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まとめ
「公認会計士は食えない」という言説は、制度変更や就職難の時期、AIの台頭といった特定の背景から生まれたものであり、資格そのものの価値が低下したわけではありません。実際には、スキルを磨き、専門性を高め、自分に合ったキャリアを選び取っている会計士は、今も十分に“食える”存在として活躍しています。
重要なのは、「何ができるか」ではなく「何に強みを持ち、どこで活かすか」を明確にし、継続的にキャリアをデザインしていくことです。監査法人にとどまるだけでなく、FASや事業会社、アドバイザリーなど多様な道を模索する中で、あなたにしかないキャリアがきっと見つかるはずです。
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