公認会計士資格を持つ30代の転職者数は多い
「30代での転職は遅いのでは?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、30代はむしろキャリアの幅を広げる絶好のタイミングです。実際、監査法人から事業会社やFAS、コンサルティングファームへの転職を検討・実行する方は多く、30代で新たな一歩を踏み出すケースは非常に一般的です。
日本公認会計士協会が実施したアンケート調査によると、監査法人から企業に転職した会計士のうち、「30歳以下」が37%、「35歳以下」が35%という結果が出ています。

参考:組織(企業)内の会計専門家に関するアンケート調査結果(中間報告)について
この結果からも、30代は20代と並ぶほど転職が活発な年代であることが分かります。
これまでの経験や専門性を活かしつつ、より自分らしいキャリアや働き方を実現できるという点でも、30代は転職にとって大きなチャンスの時期だといえるでしょう。
30代公認会計士の主な転職理由
30代になると、公認会計士としてある程度の経験を積んでいる一方で、「この先どんな働き方をしたいか」「どんなキャリアを築きたいか」といった将来像を見つめ直すタイミングが訪れます。実際に、監査法人から転職を決めた会計士の声からは、ライフスタイルや価値観の変化に伴う悩みが多く見受けられます。この章では、30代公認会計士が転職を考える際によく挙げる理由について、3つの視点から紹介します。
働き方を見直したい
結婚や出産、育児といったライフイベントが重なることが多い30代では、ワークライフバランスへの意識が高まります。監査法人の多忙なスケジュールに疲弊し、「もっと安定した勤務環境で働きたい」「リモートワークやフレックス制度を活用して柔軟に働きたい」といった希望を持つ方が増加しています。
日本公認会計士協会が実施したアンケート調査においても、監査法人から転職した動機として「勤務時間の安定」を挙げる人は3割を超えており、働き方の見直しが転職を考える大きな理由となっていることがうかがえます。
キャリアアップを目指したい
監査業務を通じて得た知識や経験を、よりダイナミックなフィールドで活かしたいと考える人も少なくありません。
実際に、「今後のキャリアアップ」を転職の前向きな理由として挙げた割合は約6割にのぼります。
たとえば、財務デューデリジェンスやバリュエーション業務、事業再生やフォレンジックなどのFAS領域に挑戦するケースや、事業会社の経営企画・財務部門でCFO候補としてのキャリアを目指す事例もあります。30代は、専門性を高めながら次のステージに進むには絶好の時期です。
監査業務にやりがいを感じなくなった
「形式的な作業が多くなった」「クライアントにもっと踏み込んだ支援をしたい」といった声も、30代会計士の中には多く聞かれます。近年の監査業務はデジタル化が進み、マニュアルに従った作業が中心となる傾向があります。
また、監査法人の独立性の原則により、クライアントに対して深く関与することが難しい場面も少なくありません。こうした背景から、「もっと企業の中に入り込み、意思決定に関与したい」と考えるようになり、転職を決意するケースが増えているのです。
公認会計士資格を持つ30代の転職先の選び方
30代で転職を検討する公認会計士にとって、転職先の選び方は今後のキャリアを大きく左右する重要なポイントです。20代の転職が「経験を積むため」のステップだとすれば、30代は「自分らしいキャリアを形にする」段階。
即戦力としての期待も高まるなか、自身の価値を最大限に発揮できる環境を見極めることが求められます。ここでは、30代の会計士が転職先を選ぶ際に意識すべき視点を紹介します。
次のキャリアを見据えた転職先を選ぶ
目の前の条件だけで判断するのではなく、5年後、10年後のキャリアを描いた上で「今選ぶべき環境」を考えることが大切です。たとえば、将来的に経営層やCFOを目指すのであれば、コンサルファームや事業会社の経営企画、財務部門での経験が大きな糧になります。
一方、専門性を高めたいのであれば、FASでの財務DDやバリュエーション、フォレンジックといった領域に挑戦するのも有力な選択肢です。転職はあくまでも手段。自分が望むゴールに到達するためのルートであるべきです。
スキル・経験が活かせる環境を選ぶ
30代の転職では、未経験領域へのチャレンジであっても、これまでに培った経験やスキルをどう活かせるかが問われます。たとえば、監査法人での業務経験は、FASの財務デューデリジェンスやコンサルティング会社やアドバイザリー部門における内部監査、経理の制度構築などで高く評価されます。
また、複数のクライアントを同時に担当してきたマルチタスク能力や、資料作成・報告業務の精度の高さも、事業会社で即戦力として重宝される要素です。自身の強みを客観的に棚卸しし、それを活かせる環境かどうかを見極めましょう。
働き方やライフスタイルに合う企業を選ぶ
ライフステージが変化しやすい30代だからこそ、働き方に対する優先順位も明確にしておく必要があります。リモートワークやフレックス制度の有無、繁忙期の有無、子育てへの理解など、企業の働き方改革の実態もチェックポイントです。
柔軟な働き方が可能な中小企業やスタートアップ、大手コンサルティングファームなども選択肢に入るでしょう。ライフスタイルとのバランスが取れる企業を選ぶことが、転職後の満足度に大きく影響します。
30代の公認会計士が転職をする時のポイント

30代での転職は、キャリアチェンジというよりも、これまでの経験をもとに「より自分らしく働ける場を見つける」ステップといえます。その分、企業側からは即戦力としての期待も大きく、20代の転職とは異なる視点と準備が必要です。ここでは、30代の公認会計士が転職を成功させるために押さえておくべき3つのポイントを解説します。
転職理由を明確にする
「なぜ転職するのか」を自分自身が納得できていなければ、選考でも一貫性のある志望動機を伝えることができません。単に「年収を上げたい」「残業を減らしたい」といった表面的な理由ではなく、「キャリアの軸をどう定めたいか」「どんな働き方を実現したいか」といった深掘りが必要です。
また、ネガティブな理由であっても、それをどうポジティブな動機に転換するかがポイントとなります。たとえば、「監査の形式的な業務から脱却し、よりクライアントに寄り添った支援をしたい」といった形で、自分のWillを語れるようにしておきましょう。
即戦力としての役割を意識する
30代の会計士は、採用する企業にとって即戦力としての貢献を強く期待されています。そのため、「自分には何ができるのか」「どのような形で組織に貢献できるのか」を明確に伝えることが重要です。特に、監査業務で得た分析力やドキュメンテーション能力、クライアント対応の経験は、FASや事業会社、コンサルティングファームでも高く評価される要素です。
転職先で自分が担うべき役割や、どんな成果を出せるかまで言及できると、企業からの信頼度も高まります。
条件だけで選ばず、中長期の視点を持つ
年収や勤務地、福利厚生といった条件面に目が向きがちですが、転職の成功とは「長く満足して働けるかどうか」によって決まります。たとえ条件が良くても、自分が興味を持てない業務や価値観が合わない社風であれば、再び転職を考えることになりかねません。
今後のキャリアビジョンに合致するか、成長機会があるかといった中長期的な視点を持ち、自分にとって本当に価値のある転職かどうかを見極めましょう。
30代公認会計士の転職事例
30代の公認会計士にとって、転職はキャリアの転機となる重要な選択です。監査法人で経験を積んだのち、より専門性の高い業務や、ライフスタイルの変化に応じた働き方を求めて転職を考える方が増えています。ここでは、実際に転職を通じて新たなキャリアを切り開いた事例をご紹介します。
30代後半でのFAS業界への転職事例
30代後半のAさんは、会計士試験合格後、大手監査法人に11年間勤務し、マネージャーとして監査業務に従事していました。しかし、もっとクライアントの近くで経営支援に関わりたいという思いから、FAS業界への転職を決意。戦略立案から実行支援まで幅広く携われるM&Aアドバイザリー職を志望し、独立系FAS会社への転職を果たしました。
30代後半という年齢や、年収ダウンを伴う決断は簡単なものではありませんでしたが、「今後のキャリアのために挑戦したい」という強い意志が企業に評価され、転職成功につながりました。年収は1,000万円から800万円に下がったものの、Aさんは自らのキャリアに必要な環境と経験を手に入れ、新たなスタートを切りました。
第二子誕生を機にワークライフバランスを見直した転職事例
30代前半のBさんは、大手監査法人にて9年間勤務し、アシスタントマネージャーとして上場企業の監査やIPO支援に従事していました。仕事にはやりがいを感じていたものの、慢性的な残業の多さに将来への不安を抱いており、第二子の妊娠をきっかけに転職を決意されました。
監査やIPO支援の経験を活かしつつ、柔軟な働き方ができる環境を求め、いくつかの独立系コンサルティング会社をご紹介。中でも、フレックス制度や在宅勤務制度が整っている企業に魅力を感じ、最終的にIPOコンサルタントとして転職されました。
年収は900万円から850万円+業績賞与と年収は微増だったものの、入社後2年でパートナーに昇進されるなど、大きなキャリアアップも実現されています。
30代公認会計士の転職に関するよくある質問
30代で転職を考える公認会計士の方々からは、年齢にまつわる不安や、転職市場での立ち位置についての質問が多く寄せられます。ここでは、特に多く見られる質問を取り上げ、実情に基づいてお答えします。
30代から公認会計士の資格を取るのは遅いですか?
結論から言えば、30代からの資格取得でも決して遅くはありません。金融庁が公表した令和6年公認会計士試験の合格者統計によると、30歳以上35歳未満の合格者は全体の7.9%、35歳以上40歳未満は2.5%と、20代に比べると合格者数は少ないですが、年齢がネックになることはほとんどありません。
むしろ、30代で社会人経験を積んできた方は、実務に即した対応力やコミュニケーション能力が評価され、就職・転職の場面で高く評価される傾向にあります。特に監査法人のアドバイザリー部門やFAS、事業会社の経理・財務ポジションでは、会計知識に加えてビジネス経験が求められるため、30代での資格取得者は即戦力として歓迎されやすいのです。
実際に、30代で公認会計士資格を取得し、監査法人やコンサルティング会社で活躍している方も数多くいます。年齢を気にするよりも、これまでの経験をどう活かすかに目を向けることが、成功の鍵となるでしょう。
転職に適した時期はありますか?
公認会計士が転職活動を始める最適な時期は、転職先によってさまざまです。
プロフェッショナルファームでは、通年採用があるため、時期にとらわれすぎる必要はありません。
一方で、事業会社への転職を検討する場合は、1月・4月・10月といったきりの良いタイミングで入社するケースが多い傾向にあります。また、会計士以外の方が多く在籍する事業会社では、6月・12月の賞与を受け取ってから退職する動きが一定数あり、その欠員補充のための求人が7~8月や1~2月に増えることもあります。
こうした傾向を参考にしつつも、自分の希望や準備状況に合わせて、最適なタイミングで動くことが大切です。
公認会計士の転職ならVRPパートナーズへ
30代の公認会計士が転職を考えるうえで重要なのは、自身のキャリアビジョンに合った道を見つけることです。しかし、会計士の転職市場は多様化しており、FASやM&A支援、事業会社、アドバイザリー業務など、選択肢が豊富な反面、自分に本当に合ったキャリアパスを見極めるのは容易ではありません。
VRPパートナーズは、公認会計士資格を持つ方に特化した転職支援を行っており、特に監査法人出身者のFAS・アドバイザリー分野への転職実績が豊富です。Big4系FASや独立系ファーム、コンサルティング会社など、各分野に精通したコンサルタントが在籍し、職務経歴の棚卸しから書類添削、面接対策まで徹底的にサポートします。
また、単なる「求人紹介」ではなく、あなたのキャリアの方向性をともに考えるパートナーとして伴走。監査からFAS、事業再生、内部監査、IPO支援まで、あなたの可能性を広げる転職先をご提案します。公認会計士として、次の一歩に踏み出したいと考える方は、ぜひ一度VRPパートナーズにご相談ください。
まとめ
30代は、公認会計士としてのキャリアを再設計する重要なタイミングです。働き方やライフスタイルの変化、キャリアアップへの意欲、監査業務への違和感など、転職を考える背景は人それぞれですが、いずれも「自分らしく働きたい」という思いに根ざしています。
大切なのは、自身の価値を見極め、将来のビジョンと一致する転職先を選ぶこと。そのためには、経験やスキルを正しく評価し、長期的な視点でキャリアを考える必要があります。
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