志望動機作成の前に整理しておきたい3つの準備
監査法人への就職・転職活動において、志望動機は応募者の本気度や適性を測る重要な判断材料のひとつです。ただし、漠然と「会計に興味がある」「監査経験を活かしたい」といった内容では他の候補者との差別化が難しく、説得力に欠けてしまうことがあります。そこでまずは、志望動機を作成する前に整理しておくべき3つのポイントを押さえておきましょう。
キャリアプランを明確にする
志望動機を考えるうえで最初に大切なのは、「この法人に入って何をしたいのか」「将来どうなりたいのか」というキャリアの方向性をはっきりさせることです。たとえば「上場企業の監査経験を積みたい」「将来的にFASやアドバイザリー領域に進みたい」といった具体的な目標があれば、志望理由も自然と明確になります。自分が監査法人で実現したいビジョンを言語化しておくことで、法人側にも納得感のある動機として伝わります。
志望する監査法人の特徴を理解する
Big4・中堅監査法人・小規模の監査法人など、監査法人ごとに得意とする業種やサービスライン、社風や働き方に違いがあります。自分が志望する法人がどのような特徴を持ち、他の法人と何が違うのかを事前に調べておくことは、志望動機を作成するうえで欠かせません。表面的な志望理由ではなく、「その法人だからこそ働きたい」と思わせる動機を伝えるには、企業理解の深さが求められます。
自身のスキル・経験を棚卸しする
志望動機では、「なぜその法人を選ぶのか」と同時に、「その法人でどう貢献できるのか」も問われます。そのため、これまでの職務経験や保有資格、業務上の強みなど、自分のスキルを具体的に整理しておくことが大切です。監査経験の年数、担当業界、関与したプロジェクトなどを洗い出し、自分がどのような場面で価値を発揮できるのかを明確にしておきましょう。
監査法人の志望動機で見られるポイント

志望動機は、履歴書やエントリーシート、そして面接においても繰り返し確認される重要な項目です。単なる熱意や憧れを伝えるだけではなく、監査法人の選考では「その法人にどれだけフィットするか」「入社後に活躍できそうか」が重視されます。ここでは、実際に採用担当者がチェックしている主なポイントを解説します。
志望理由に法人ごとの特色が反映されているか
監査法人はそれぞれ、強みとしている業種、提供しているサービス、働き方や社風などに違いがあります。志望動機にこうした特徴がしっかりと反映されているかどうかは、志望度の高さを測るうえでも重要な指標となります。たとえば「製造業のクライアントが多いことに魅力を感じた」「アドバイザリー部門との連携で幅広い経験ができる環境に惹かれた」など、具体的なリサーチ結果を踏まえた内容があると説得力が高まります。
転職理由やキャリアプランと一貫性があるか
「なぜ今転職するのか」「なぜその法人を選ぶのか」が、自身のキャリアプランと矛盾していないことも重要です。将来的にFASや経営企画を目指しているにもかかわらず、純粋な監査業務に特化した法人を希望するなど、一貫性に欠ける動機はマイナスに働く可能性があります。転職理由と志望動機の間にしっかりとしたストーリーがあるか、今一度見直してみましょう。
入社後に活かせるスキルや経験があるか
監査法人側は、「この人はどのような形で貢献してくれるのか」という視点でも志望動機を見ています。そのため、自身の監査経験や関与したプロジェクト、業界知識、語学力など、具体的なスキルに言及し、それが志望先の業務にどう活かせるのかを示すことが効果的です。アピールする際は、“成果”や“役割”を簡潔にまとめることで印象に残りやすくなります。
現場での協働力・成長意欲があるか
どれほど高い専門性を持っていても、現場で周囲と円滑に協働できなければ活躍は難しいと考えられています。そのため、「学ぶ姿勢」や「チームで成果を出す姿勢」についても、志望動機や自己PRの中で伝えておくことが望ましいです。過去にチームで取り組んだ事例や、困難を乗り越えて成長した経験などを交えて語ると、より効果的な印象を残すことができます。
監査法人ごとの特色と志望動機の書き分け方
監査法人ごとに強みや提供サービス、社風は大きく異なります。志望動機を作成する際には、それぞれの特徴を理解し、自分のキャリアや志向とどうマッチしているのかを明確に伝えることが重要です。ここでは代表的な3つのカテゴリに分けて、それぞれの特徴と志望動機の書き方のポイントを紹介します。
Big4の特徴と志望動機のポイント
PwC、EY、KPMG、Deloitteに代表されるBig4は、監査業務だけでなく、FASやリスクアドバイザリー、税務、コンサルティングまで多様な専門サービスを提供する総合ファームです。グローバルネットワークを活かした案件や、大企業を対象とした大規模監査に携われるのが大きな魅力です。
志望動機では、「グローバル案件に関わりたい」「将来的にFAS部門でキャリアを広げたい」「特定業種に強いグループに所属したい」など、自分のキャリアプランと法人の強みが結びついていることを示すと効果的です。また、各法人ごとに力を入れている業種や部門が異なるため、それに言及できると説得力が増します。
中堅・中小監査法人の特徴と志望動機のポイント
中堅・中小規模の監査法人は、クライアントとの距離が近く、幅広い業務を一人の担当者が担うケースも多いため、実務経験を積む機会が豊富にあります。また、成長中の企業や非上場企業の支援を行っている場合も多く、柔軟な働き方やワークライフバランスを重視する人にとっては魅力的な選択肢です。
志望動機では、「経営者と近い距離で仕事がしたい」「幅広い業務に関与して実力を高めたい」「中長期的に腰を据えてクライアント支援に携わりたい」などの視点が有効です。大手とは異なるスピード感や実務の幅広さに魅力を感じていることを具体的に伝えましょう。
外資系・グローバル案件に強い法人の特徴とポイント
BIG4をはじめとした、外資系・グローバル案件に強い監査法人は、IFRS対応やクロスボーダーの案件、英語での監査対応など、グローバルな環境での経験を積める点が特徴です。英語力を活かしたい、海外クライアントに関わりたいという方には適した環境です。
志望動機では、「国際的な業務に関与したい」「USCPAとして英語を使った仕事がしたい」「IFRS監査に興味がある」といった視点を軸に、自身の語学スキルや海外志向とマッチする部分を強調すると良いでしょう。加えて、グローバルな働き方に対する理解や柔軟性があることもアピールできると好印象です。
【例文あり】監査法人の志望動機サンプル
監査法人への志望動機は、応募者の立場や背景によって書き方のポイントが異なります。ここでは、代表的な3つのパターンについて、例文と注意点を併せてご紹介します。
大手監査法人から中堅・中小監査法人への転職志望動機監査法人から別法人への転職志望動機
例文:
現在、Big4監査法人にて上場企業の会計監査に従事しておりますが、よりクライアントに近い距離で支援を行いたいと考えるようになり、貴法人を志望いたしました。貴法人は中堅・中小企業に対する実情に即した支援を強みとしており、私の監査経験を通じて培った財務報告に関する知見や、業務プロセスの理解力を活かしながら、企業の成長を支える一助となれると感じております。
また、貴法人では若手にも裁量が与えられると伺っており、より主体的に業務に取り組みたいという希望とも一致しています。
注意点:
転職理由が曖昧だったり、「前職で不満があったから」といったネガティブな印象が強すぎると、志望動機全体の説得力が損なわれます。「なぜこの法人を選んだのか」に加えて、「どのように活躍したいのか」をポジティブな視点で明確に伝えましょう。
英語力を活かしたい会計士試験合格者・USCPA合格者の志望動機会計士試験合格者・USCPAの志望動機
例文:
公認会計士試験に合格し、現在は監査法人での就業を目指して準備を進めております。学生時代から財務会計を中心に学び、特にIFRSやグローバル企業の財務諸表監査に関心を持ってきました。貴法人が多くの国際的クライアントを抱え、英語を活用しながら監査業務を行える環境であることに強く魅力を感じております。今後は、英語力を活かしてクロスボーダー案件にも携わりながら、監査人としての基盤を築いていきたいと考えております。
注意点:
試験合格の熱意や学習経験に終始せず、「入社後にどう貢献できるか」「なぜこの法人に関心があるのか」といった視点を必ず盛り込むことが重要です。また、語学や国際志向をアピールする場合は、具体的なエピソードや実績があると説得力が増します。
キャリアチェンジ目的の志望動機
例文:
これまで事業会社の経理部門で約10年間、連結決算や監査対応業務に携わってまいりました。会計数値を作成する立場としての経験を活かし、今後は監査人として多様な企業の課題と向き合い、より客観的な視点で企業成長に貢献したいと考えるようになりました。貴法人では、業界を問わず幅広いクライアントに対して専門的な監査サービスを提供されており、自身の経験を新しいフィールドで活かす機会があると感じ、志望いたしました。
注意点:
キャリアチェンジの理由は、前職への不満ではなく「実現したい姿」「発揮したい力」を軸に語ることがポイントです。また、未経験分野への挑戦である場合は、学習意欲や適応力を示すエピソードも添えると安心感を与えられます。
志望動機と合わせて準備したい面接対策

志望動機がしっかり練られていても、面接でうまく伝えられなければ高評価にはつながりません。監査法人の面接では、論理性や誠実性に加えて、現場での協働力や将来性も見られています。ここでは、志望動機と一貫性を持たせながら、面接で好印象を与えるために意識すべき対策ポイントをご紹介します。
志望動機を自分の言葉で語れるようにしておく
面接では、履歴書に書かれた志望動機をそのまま読むのではなく、自分の言葉で簡潔に伝えることが求められます。内容の正確さよりも、「なぜそう考えるのか」「その選択にどんな想いがあるのか」といった背景をしっかり語れるかが重要です。丸暗記ではなく、会話の中で自然に答えられるよう準備しておきましょう。
過去の経験と志望動機を結びつける
「なぜその法人を選んだのか」という理由に対して、過去の経験や学びがどう影響しているかを説明できると、説得力が大きく増します。たとえば「〇〇業界の企業を多く担当していた経験から、同業界に強い貴法人でより深く関与したい」といったように、ストーリー性を意識するとよいでしょう。
ロジカルに話す力と簡潔さを意識する
監査法人の面接では、論理的思考力が重視されます。質問に対して「結論→理由→具体例」という構成で回答することを意識するだけで、印象が大きく変わります。また、冗長にならず、1〜2分程度で要点を伝えられるよう練習しておくことも効果的です。
想定質問と逆質問も事前に準備を
志望動機以外にも、「これまでの業務で工夫したこと」「チームで困難を乗り越えた経験」など、よくある質問に対して自分のエピソードを整理しておくと安心です。さらに、面接終盤の「何か質問はありますか?」という逆質問では、法人理解を深めたうえで具体的な質問を用意しておくと、志望度の高さを示すことができます。
志望動機を考える際によくあるNG例と注意点
監査法人への志望動機を書くうえで、意外と多くの方が陥りがちなNGパターンがあります。せっかくの熱意や実績があっても、伝え方を誤るとマイナスに受け取られてしまう可能性もあります。ここでは、代表的なNG例と、それぞれの注意点を解説します。
年収・待遇だけを理由にする
NG例:
「貴法人は報酬水準が高く、福利厚生も充実しているため志望しました。」
注意点:
待遇面に惹かれるのは自然なことですが、それだけを前面に出すと「短期的な動機」と見なされ、入社後の定着意欲や本気度に疑問を持たれてしまいます。志望動機では、「なぜその法人で働きたいのか」「どのように活躍したいのか」といった本質的な部分を軸にすることが大切です。
抽象的・汎用的すぎる表現
NG例:
「会計の知識を活かして社会に貢献したいと思い、志望しました。」
注意点:
一見きれいに聞こえる言葉でも、具体性に欠けると他の応募者との差別化ができず、評価されにくくなります。法人の特徴や自身の経験とリンクさせ、「何を通じてどう貢献したいのか」まで具体的に示すことがポイントです。
前職の不満だけを語る
NG例:
「現職では希望していた業務に携われず、不満があるため転職を決意しました。」
注意点:
転職理由に不満があるのは珍しくありませんが、それを前面に出すとネガティブな印象を与えてしまいます。「何を解消したいか」ではなく、「何を実現したいか」に言い換え、ポジティブな目線で志望理由を語るよう意識しましょう。
自分視点のみで語り、貢献視点がない
NG例:
「キャリアアップのために幅広い業務を経験したいと考え、志望しました。」
注意点:
自身の成長意欲は評価されるポイントではありますが、それだけでは「受け身」な印象になります。志望先でどのように貢献したいのか、どんな価値を提供できるのかを明確にすることで、「一緒に働きたい」と思わせる動機になります。
VRPパートナーズが志望動機の作成・面接対策をサポート
監査法人への転職や就職活動において、「志望動機がうまく書けない」「自分に合った法人がわからない」と悩む方は少なくありません。VRPパートナーズでは、公認会計士・試験合格者を専門とした転職支援を行っており、志望動機の作成や面接対策においても多数の支援実績があります。
各監査法人の特色や選考傾向を熟知したキャリアアドバイザーが、法人ごとの志望動機の書き分け方、選考で重視されるポイント、実際の面接での想定質問などを丁寧にアドバイスします。応募先が決まっていない段階でも、ご相談内容に応じてキャリアの方向性から一緒に整理いたします。
また、履歴書・職務経歴書の添削、模擬面接の実施、面接後の振り返りフォローなど、選考通過率を高めるための実践的なサポートもご用意。単なる求人紹介にとどまらず、「納得できる転職」を実現するための伴走型支援を行っています。
自分に合った監査法人で、将来を見据えたキャリアを築いていきたいと考えている方は、ぜひ一度VRPパートナーズへご相談ください。
まとめ
監査法人への就職・転職活動では、志望動機のクオリティが選考結果に大きな影響を与えます。ただ単に「働きたい」という気持ちを伝えるのではなく、「なぜその法人を選ぶのか」「どのように貢献したいのか」を、キャリアプランや経験と紐づけて具体的に伝えることが求められます。
法人ごとの特色を理解したうえで、自分の価値観や目標と一致する点を見つけ出し、説得力のある志望動機を作成することが成功のカギです。そしてその内容が、面接での対話にも自然につながるよう、準備を重ねておくことが重要です。
VRPパートナーズでは、こうした準備をプロの視点からサポートし、あなたの強みや希望に沿ったキャリア形成を支援します。志望動機に悩んでいる方、初めての転職活動で不安な方も、ぜひお気軽にご相談ください。