2025.08.08

公認会計士

公認会計士が事業再生分野で活躍するには?職種・転職先・成功事例まとめ

公認会計士が事業再生分野で活躍するには?職種・転職先・成功事例まとめ

事業再生に公認会計士が求められる理由

事業再生の現場では、財務状況の正確な把握と原因分析が不可欠です。経営不振の企業にとって、何が問題で、どこに改善の余地があるのかを見極めるには、高度な会計知識と数字を読む力が求められます。そこで重宝されるのが、会計・財務のプロフェッショナルである公認会計士の存在です。

事業再生支援機構(RCC)が示すスキームにおいては、公認会計士や税理士などの専門家が財務デューデリジェンスを担当する役割として明示されています。

また、中小事業再生支援協議会が組成する「個別支援チーム」においても、公認会計士は外部専門家の一員として参画しており、経営者や金融機関との調整を行いながら、事業再生計画の立案やモニタリングに関与しています。

参考:事業再生実務と公認会計士の役割

このように、公認会計士は、監査業務を通じて培った財務諸表の分析力や、企業の内部統制に関する知識を活かして、企業の課題を多角的に検討することができます。

さらに、利害関係者が複雑に絡み合う事業再生のプロセスでは、正確かつ中立的な立場で財務状況を伝え、信頼を得られる専門家が必要です。公認会計士はその役割を果たせる数少ない存在として、事業再生分野でも高く評価されています。

監査と事業再生の業務の違いは?

監査と事業再生はいずれも会計知識をベースにした業務ですが、そのアプローチや関わり方には大きな違いがあります。

監査業務は、第三者的な立場からクライアントの財務諸表が適正であるかどうかをチェックすることが目的です。独立性が重視され、クライアント企業の意思決定には直接関与せず、ルールに沿った正確性や整合性の検証が求められます。業務の性質上、プロセスは比較的定型的であり、ルーティンワークが多い傾向にあります。

一方で事業再生は、企業の中に深く入り込み、経営課題の特定から改善施策の立案・実行までを担う、より能動的かつ実践的な業務です。たとえば資金繰りの立て直し、事業構造の見直し、金融機関との交渉など、状況に応じて対応すべき内容は多岐にわたり、その都度異なるアプローチが必要とされます。

つまり、監査が「守り」の業務であるのに対して、事業再生は「攻め」の業務といえるでしょう。経営の現場により近い距離で、クライアントの未来に寄り添う支援ができることが、事業再生の最大の魅力です。

公認会計士が事業再生で活躍できる職種・領域とは

事業再生の分野では、公認会計士がこれまでに培った会計・財務スキルを土台に、さまざまな立場で活躍することが可能です。以下では代表的な職種をご紹介します。

FAS領域

FAS(Financial Advisory Services)は、事業再生における中核的な役割を担う業務領域です。財務デューデリジェンスやバリュエーション、リストラクチャリング支援などを通じて、企業の現状を可視化し、再生戦略の基盤を築きます。監査経験者は、財務数値に対する高いリテラシーやプロジェクト管理能力が評価され、FAS業務との親和性が高いとされています。

また、大手FASファームでは部門が細分化されており、特定分野のスペシャリストとしてキャリアを積むことも可能です。一方、独立系FASでは幅広いフェーズを担当できるため、M&Aから再生支援まで一気通貫で携わるチャンスもあります。

事業再生コンサルタント

事業再生コンサルタントは、事業・財務の両面からクライアント企業の課題にアプローチし、再生計画の立案・実行を支援する役割を担います。経営改善提案、事業ポートフォリオの見直し、現場へのハンズオン支援など、業務は多岐にわたります。

会計士としてのバックグラウンドがあることで、数字を根拠とした提案や財務面の説得力を高めることができ、経営層との信頼関係を築くうえでも優位に働きます。経営視点を磨きたい方には、特にやりがいのあるポジションです。

事業会社の経営企画・経営管理

事業再生の知見は、事業会社の経営企画や経営管理といった社内の戦略部門でも活かすことができます。たとえば、収益性の分析、コスト構造の見直し、新規事業の企画といった業務に携わりながら、財務面から経営判断をサポートする役割です。

特に再生フェーズにある企業や、経営改善を急ぐ企業では、公認会計士のような財務の専門家が重宝されます。企業の内部から再生に携わりたい方には、魅力的な選択肢となるでしょう。

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公認会計士の事業再生分野へのキャリアチェンジ事例

事業再生という専門性の高いフィールドに挑戦するには、明確な志向や準備が求められますが、実際に未経験からこの領域へ転職を果たした公認会計士の事例も多数存在します。ここでは、異なるバックグラウンドを持つ3名の転職成功例をご紹介します。

独立系会計事務所からBig4FASへ

30代半ばの男性会計士の事例です。彼は事業会社で経理経験を積みながら会計士試験に合格しましたが、当時の就職環境は厳しく、大手監査法人への入所が叶わず、独立系の会計事務所に進むことになりました。そこで会計・税務の実務経験を積んだ後、M&Aや事業再生支援にも携わり、より大規模な事業再生の現場で経験を深めたいと考えるようになります。

その想いを実現すべく、転職活動を開始。結果として、見事にBig4FASの事業再生アドバイザリー部門への内定を獲得しました。転職後の年収は750万円に業績賞与100万円が加わる形で、条件面でも満足のいく内容に。長年の努力が実を結び、会計士試験合格後に果たせなかった「Big4への挑戦」を実現させた転職成功事例です。

監査とアドバイザリーの経験を武器に、専門性を深めるFAS転職

20代後半の男性は、学生時代に会計士試験に合格し、大手監査法人へ新卒入所。その後、監査業務を4年間経験し、同法人内のアドバイザリー部門へと異動しました。そこでM&Aや事業再生のプロジェクトに携わり、財務デューデリジェンスや事業計画の策定といった実務に従事する中で、事業再生に強い興味を持つようになります。

より専門的な立場で事業再生支援に携わりたいとの思いから転職を決意し、複数社からの内定を獲得。その中でも、地方創生プロジェクトに強みを持つBig4FASを選択しました。転職後は、年収800万円に加えて業績賞与150万円が支給される体制となり、今後のキャリアにおいても再生分野の専門家として成長していくことが期待されます。

中小企業に寄り添う独立系再生コンサルへ

こちらは20代後半の男性会計士。大学在学中に会計士試験に合格し、大手監査法人にて約6年間監査業務を担当してきました。将来的には独立を志しており、そのための実務経験を積む場として、新たに独立系コンサルティング会社への転職を決意しました。

当初から中小企業との関係構築を見据えており、クライアントの規模や案件への関わり方がより近い距離で行える独立系ファームを志望。転職先では、事業再生支援を中心としたコンサルティングを手がけ、社長や役員との直接的なコミュニケーションの中で、より実践的な経営支援に携わることができています。

年収は950万円から830万円へと一時的に下がったものの、独立を視野に入れた長期的なキャリア形成としては、大きな一歩となる転職でした。

未経験から事業再生分野へ転職する際のポイント

公認会計士として監査や税務などの経験がある方でも、事業再生分野においては「未経験」とみなされるケースがあります。とくにFAS業務や再生支援の実務経験がない場合には、志望理由や適性を明確に示すことが重要です。以下では、事業再生分野への転職を成功させるために押さえておきたい4つのポイントをご紹介します。

事業再生の基礎知識をつけておく

まずは、事業再生の全体像や用語、プロセスに関する基本的な理解を深めておくことが重要です。事業再生ADRや私的整理、法的再生手続きなどの再生手法、財務デューデリジェンスの流れ、再生計画策定のフレームワークなど、基礎的な知識を押さえておくことで、面接でも説得力ある受け答えが可能になります。

また、書籍や専門誌のほか、再生支援を行っている公的機関の公開資料なども有用です。知識のインプットは、事業再生に対する本気度をアピールする材料にもなります。

これまでの業務経験をどう活かせるか言語化しておく

たとえ再生支援の実務が未経験であっても、監査や経理の中で培ったスキルは多くの場面で活かせます。たとえば、財務数値の分析力、課題抽出力、関係者との調整経験などは、事業再生の現場でも重宝される能力です。

面接では「これまでどんな経験をしてきたか」だけでなく、「それが事業再生業務のどこに活きるか」を自分の言葉で語れるよう準備しておくことが大切です。

FASや再生系ファームごとの違いを理解しておく

一口に「事業再生」といっても、FAS、独立系ファーム、コンサルティング会社、事業会社の再生部門など、組織によって業務内容やスタンスは大きく異なります。

たとえば、大手FASでは業務が専門化されている一方、独立系ファームでは事業デューデリジェンスから再生計画の策定、実行支援まで、再生プロセス全体に関与できるケースが多いです。自分の志向やキャリアの方向性に合わせて、どのタイプの企業がマッチするかを見極めることが、転職成功のカギとなります。

早めに転職エージェントに相談する

未経験でのキャリアチェンジを成功させるためには、情報収集と選考対策が欠かせません。事業再生分野に精通した転職エージェントであれば、各社の業務内容やカルチャーの違い、選考の傾向なども踏まえた具体的なアドバイスを受けることができます。

とくにFASやコンサルティングファームは、書類選考や面接の難易度が高いため、履歴書・職務経歴書のブラッシュアップや模擬面接といったサポートが選考通過率を左右します。まずは相談ベースでも構わないので、早めにプロのサポートを受けておくことをおすすめします。

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●業務内容:
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<具体的な業務内容>
・事業・オペレーション・財務の再構築(リストラクチャリング)支援
・課題把握のためのDD及びキャッシュフロー改善支援
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●おすすめポイント:
・「財務と事業の両輪」でのアプローチを強みとして、中堅中小企業から大企業に対して幅広いサービスを提供
・経営者に寄り添って経営の視点で考えること、机上の空論にならないようにレポーティングだけではなく「実行支援」を重視したサービスを提供
・海外にも拠点を有する事から現地の市場調査、現地企業との資本提携・業務提携を提供するなどアジア、北米、ヨーロッパなど日本企業の海外展開を支援

公認会計士の転職ならVRPパートナーズへ

事業再生という専門性の高いフィールドへのキャリアチェンジを考える公認会計士にとって、信頼できる転職パートナーの存在は不可欠です。VRPパートナーズは、公認会計士資格を有する方の転職支援に特化したエージェントとして、多くの会計士のキャリア形成をサポートしてきた実績があります。

私たちは、監査法人からFAS(Financial Advisory Services)や事業再生系コンサルティング会社への転職を数多く支援しており、単なる求人紹介にとどまらず、一人ひとりの志向や将来像に合わせた提案を行っています。とくに、事業再生における各社の業務範囲や文化、組織体制の違いを理解したうえで、マッチ度の高い企業をご紹介できるのが私たちの強みです。

また、転職活動が初めての方や、コンサルティング業界に馴染みのない方でも安心して臨めるように、職務経歴書の添削、志望動機の言語化支援、面接対策などを丁寧に行っています。さらに、応募先企業の選考傾向や内定者事例を踏まえたアドバイスにより、内定獲得の可能性を最大限に高めます。

「事業再生に挑戦したいけれど、自分に向いているかわからない」「面接」そんな段階からでも構いません。あなたのこれまでの経験とこれからの目標をじっくり伺いながら、最適なキャリアの選択肢をご提案いたします。

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まとめ

監査業務を通じて培った知見やスキルを活かしながら、より経営の本質に迫る業務に携わりたいと考える公認会計士にとって、事業再生分野は大きな可能性を秘めたキャリアの選択肢です。財務・会計の専門性が直接活かせる場面が多く、クライアントの変革に寄与できるやりがいのあるフィールドといえるでしょう。

未経験からの挑戦であっても、事業再生の基礎知識や自身の経験の棚卸しを行い、適切な準備を重ねることで、十分に転職成功のチャンスはあります。そして、何より重要なのは、あなた自身がどのようなキャリアを描きたいのかを明確にすることです。

VRPパートナーズでは、会計士の価値を最大限に活かした転職を支援しています。事業再生という専門領域で新たなステージを目指したい方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの次の一歩を、私たちが全力でサポートいたします。

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