会計士は副業できる?基本ルールをチェック
働き方の多様化にともない、副業を検討する公認会計士の方も増えてきました。しかし、会計士という職業は高い専門性と倫理性が求められるため、他の職業に比べて副業に慎重になるべき点が多くあります。まずは、法的なルールや所属先の規定をしっかり確認することが、副業検討の第一歩です。
法律・公認会計士法・就業規則の確認が第一歩
公認会計士が副業を始めるにあたって、まず確認すべきは「法律」と「所属先の就業規則」です。副業そのものを禁じる法律はありませんが、公認会計士法では「信用・品位を害する行為の禁止」や「利益相反の防止」などが定められており、業務の独立性や公正性が損なわれるような副業には注意が必要です。
また、所属先が監査法人や企業の場合、就業規則によって副業が制限されているケースがあります。無断で副業を行えば、就業規則違反となり処分の対象となる可能性もあるため、事前に正式な確認・申請が欠かせません。
監査法人勤務の場合、副業の可否は法人ごとに異なる
監査法人に所属している会計士の場合、副業の可否は法人の方針によって異なります。特にBig4系の監査法人やFAS(Financial Advisory Service)においては、副業を原則として禁止しているケースがほとんどです。これは、独立性や利益相反、情報管理といった観点からの厳格な方針によるものです。
一方で、法人によっては「申請すれば許可される副業」や、「業務時間外の活動に限り一部容認」といった柔軟な対応を取るところもあります。所属法人のガイドラインを正確に把握したうえで判断することが求められます。
独立性や利益相反に注意する必要がある
副業を行う際に特に注意すべきなのが、会計士の職務上の「独立性」や「利益相反」の問題です。たとえば、監査先企業に対してコンサルティング業務を行う、顧客情報を別の業務で流用するなどの行為は、公認会計士としての倫理規程に反する恐れがあります。
また、税理士業務や社外役員就任といった副業を行う場合にも、関与先との利害関係や情報の取扱いについては慎重に対応する必要があります。副業の内容によっては、日本公認会計士協会への届け出や相談が必要となるケースもあるため、判断に迷った際は専門機関に確認を取ることが重要です。
会計士が副業を考える背景とは?

公認会計士という専門職でありながら、副業に関心を持つ人は年々増加しています。その背景には、単なる収入アップだけではない、価値観や働き方の変化が影響しています。ここでは、会計士が副業を始めようと考える主な理由を紹介します。
スキルを広げたい・収入を増やしたい
本業で得たスキルをさらに発展させたい、あるいは新しい分野にチャレンジしたいという動機から、副業を始める会計士は少なくありません。たとえば、税務や財務分析といった本業に近い領域での副業は、実務との相乗効果も期待でき、スキルの幅を広げるチャンスとなります。
また、生活スタイルや将来の資金計画に合わせて「収入の柱をもう一つ持ちたい」と考える方も増えています。副業を通じて自分の市場価値を再確認し、報酬水準を見直すきっかけになることもあります。
キャリアの選択肢を増やしたい
一つの組織に依存せず、多様な経験を積みたいという思いから、副業を通じてキャリアの幅を広げる会計士もいます。たとえば、教育・研修講師や執筆活動、社外プロジェクトへの参加などは、異なる業界・立場での視点を得られる貴重な機会です。
こうした副業経験は、将来的に事業会社やコンサルティングファーム、ベンチャー企業などに転職する際の武器にもなり得ます。自分の強みや興味を再発見する場としても、副業は有効な選択肢です。
独立・転職を見据えた準備としての副業
将来的に独立を目指す方にとって、副業は「小さく始めて、確かめる」ための実践の場でもあります。たとえば、クラウド会計を使った記帳代行やスタートアップ企業のCFO代行、フリーランスとしての会計アドバイザー業務などは、低リスクで独立の感覚を掴める手段です。
また、転職を検討している場合でも、副業を通じて別業界や職種に触れることで、自分に合う仕事や働き方を見極めやすくなります。本業と並行しながら「次のステージ」を探る準備としても、副業は有効な選択といえるでしょう。
会計士におすすめの副業
公認会計士が副業を始めるにあたっては、自身の専門性を活かせる分野を選ぶことで、本業とのシナジーを得ながら無理なく収入や経験の幅を広げることができます。以下では、特におすすめしたい副業の種類を紹介します。
オンラインでの会計・経理サポート
リモートワークの普及に伴い、クラウド会計やオンラインツールを使った経理サポートのニーズが急増しています。スタートアップや中小企業を中心に、記帳・決算補助・税理士との連携といった業務の外部委託が進んでおり、会計士にとっては副業として始めやすい分野です。
時間や場所に縛られず、自分のペースで関与できるため、平日夜間や週末の時間を有効活用したい方にも適しています。
開示資料チェック・内部統制資料作成
IPO準備企業や上場企業における開示資料(有価証券報告書、決算短信など)の作成支援やレビュー業務も、会計士の副業として人気があります。短期間・単発のプロジェクトも多く、監査業務で培った知見をそのまま活かすことができます。
また、内部統制の整備や文書化支援といったバックオフィス強化プロジェクトにも、会計士が求められるケースが増えています。
社外CFO・財務アドバイザー業務
成長中のベンチャー企業や小規模企業では、財務や資金調達に関する知見が不足していることが多く、外部からの専門的アドバイスを求める傾向があります。こうした企業に対して、社外CFOや財務アドバイザーとして参画する副業も注目を集めています。
事業計画の作成、資金調達の支援、財務分析といった業務に関われるため、経営に近い立場で実践経験を積みたい会計士にとって魅力的な選択肢です。
大学や専門学校での非常勤講師・講義
教育分野での副業も、会計士の知識を社会に還元できる有意義な選択です。会計・監査・税務・経営分析などの科目で、大学や専門学校の非常勤講師として教壇に立つ機会があります。
本業とは異なるスキル(伝える力、教材作成など)も問われますが、学生や社会人に教えることで自らの理解も深まり、やりがいを感じやすい分野です。
コラム執筆・監修・セミナー登壇
専門知識を活かした文章の執筆や、監修、各種セミナー・研修の講師といった副業も、会計士としての信頼性を外部に伝える手段となります。特に、実務経験をもとにしたテーマでの記事は企業やメディアからのニーズが高く、自身のブランディングにもつながります。
継続的な収益には直結しにくい面もありますが、社会的な発信力を高めたい方にとっては価値ある活動です。
株式投資・不動産投資など資産運用系
副業の中でも、比較的時間に縛られず取り組みやすいのが投資系です。会計士は財務諸表や企業分析に強いため、株式投資やREIT、不動産投資といった資産運用において他業種よりも優位に立ちやすい傾向があります。
ただし、投資は元本割れのリスクがあるため、業務に支障が出ないよう冷静な判断とリスク管理が求められます。
会計士が副業を始めるときに気をつけたいポイント

副業はスキルや経験を広げる好機である一方、公認会計士という職業上、注意すべき点も多く存在します。副業を円滑かつ有益に進めるために、以下のポイントを意識することが重要です。
本業への影響を最小限にする
副業が本業のパフォーマンスや責任に影響を及ぼすようでは本末転倒です。勤務時間外に行う、副業のボリュームを調整する、繁忙期は副業を抑えるなど、無理のない運用を心がけることが大切です。
特に監査法人やコンサルティングファームに勤務している場合は、繁忙期の長時間労働も想定されるため、スケジュール管理の徹底が求められます。
所属先のルールや競業避止義務の確認をする
副業を始める前には、所属先の就業規則や誓約書の内容を必ず確認しましょう。副業禁止や申請制のルールがある場合、それを無視すると懲戒処分や信頼失墜につながるリスクがあります。
また、競業避止義務により、所属先と同業他社での業務や類似ビジネスへの関与が制限される場合もあります。業務内容に関連性がある場合は、事前に法務や人事部門に確認を取るのが賢明です。
短期利益よりも「キャリアの軸」に合うかを重視する
副業は単なる収入手段ではなく、将来的なキャリアを見据えた経験の積み重ねとして位置づけることが重要です。目先の報酬だけで副業を選ぶのではなく、自分が伸ばしたいスキルや実現したい働き方に合致しているかを判断基準にしましょう。
「将来独立したい」「教育に携わりたい」「経営に近い立場で仕事がしたい」など、長期的な視点を持つことで、副業経験が価値あるキャリア資産になります。
他のクライアントや取引先との「利益相反」に注意する
副業で複数のクライアントに関与する場合、情報の取扱いや業務範囲によっては利益相反のリスクが生じます。たとえば、監査先と競合する企業の業務に携わる、同業界で複数のアドバイザーを務めるといったケースは、倫理的・法的な問題を引き起こしかねません。
こうした状況を避けるためにも、副業の業務内容や契約条件を明確にし、必要に応じて上司・法務部門への相談を行うことが推奨されます。
会計士が副業からキャリアの幅を広げる方法とは?
副業は、単なる収入源にとどまらず、会計士としてのキャリアを広げるきっかけにもなります。実務を通じてスキルを磨きながら、新たな分野に挑戦したり、将来の転職や独立の準備をしたりと、副業には多くの可能性が秘められています。ここでは、副業を活かしてキャリアの幅を広げる具体的な方法を紹介します。
転職や独立のための「試運転」として活用する
将来的に転職や独立を考えている場合、副業はその実現可能性を試す「実践の場」となります。たとえば、社外CFO業務や税務支援、財務コンサルティングなどを副業で受け持つことで、自分にその働き方が合っているか、どのようなクライアントと相性が良いかを見極めることができます。
本業の安定性を維持しつつ、リスクを抑えて挑戦できる点は、副業ならではのメリットです。「いきなり独立は不安」「転職先の業務内容が想像できない」といった方にも適したアプローチと言えるでしょう。
フルタイム転職に踏み切る前の準備期間としての副業
ブランクのある方や、育児・介護・体調不良などで休職していた会計士にとっても、副業はキャリア復帰のための柔軟なステップになります。たとえば、短時間の在宅業務や単発のプロジェクト業務に関与することで、実務感覚を取り戻しつつ、自信をつけていくことが可能です。
実績を積んでいくうちに、徐々に業務量を増やし、最終的にはフルタイム勤務への移行を目指すといった活用の仕方もあります。「いきなり常勤復帰は不安」という方にとって、実務復帰への滑らかな橋渡しになるのが副業です。
専門性のかけ合わせで唯一無二の強みをつくる
副業を通じて本業では得られないスキルを身につけることで、「会計×IT」「会計×教育」「会計×マーケティング」といった“かけ合わせの強み”を形成することができます。たとえば、ITリテラシーを活かしてExcelや会計ソフトの自動化設定に強い会計士や、教育業界で講師として活躍する会計士などは、市場でも希少価値が高くなります。
こうしたスキルの複合化は、転職や独立の際の差別化ポイントとなり、ポジションや報酬の面でも優位に働くことが多いです。副業を単発の仕事で終わらせず、「キャリア資産」として育てていく視点が重要です。
会計士の転職ならVRPパートナーズへ

副業やキャリアの多様化が進む中で、「今の働き方のままで良いのか」と悩む会計士の方は少なくありません。副業をきっかけに、自分の強みや志向を見直し、次のキャリアへ踏み出す方も増えています。
VRPパートナーズは、公認会計士の転職支援に特化したエージェントです。監査法人や事業会社だけでなく、IPO準備企業やFAS、ベンチャー企業、さらには社外CFOや経営幹部候補といった非公開ポジションも豊富に取り扱っています。経験や働き方に合わせて、専門コンサルタントが個別にキャリアプランを設計し、最適な環境への転職をサポートします。
副業では得られない経験やポジションを求めたい方、柔軟な働き方を目指したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
会計士の副業に関するよくある質問
副業に関心を持つ公認会計士の中には、「実際に副業はバレるのか」「どこで案件を探せばいいのか」など、気になる点も多いのではないでしょうか。このセクションでは、副業を始めるうえでよくある疑問や注意点について、具体的に解説します。
副業禁止の場合働くとバレますか?
副業禁止の職場であっても、住民税の額やSNSでの発信などから副業が発覚することがあります。特に、住民税の特別徴収(給与天引き)によって、税額の不一致に気づかれるケースが代表的です。また、副業先のクライアントとの関係性や知人経由で噂が広まることもあり、「バレにくい」からといって完全に安全とは限りません。
副業を行う場合は、必ず所属先の就業規則を確認し、申請や相談のうえで進めることが望ましいです。
副業を探す方法は?
会計士向けの副業案件は、クラウドソーシングやスカウト型の副業マッチングサービス、知人経由の紹介など、さまざまな方法で見つけることができます。特に、IPO準備企業やベンチャーでは、財務アドバイザーや記帳支援、開示資料レビューといった会計士ならではの知見を求める案件が多く、専門性を活かせる副業が見つかりやすい分野です。
また、士業専門の転職エージェントやコミュニティに登録しておくと、非公開案件の紹介を受けられる場合もあります。
副業が認められていない場合はどうしたらいいですか?
副業が禁止されている職場にいる場合、まずは「なぜ副業をしたいのか」という目的を明確にすることが重要です。たとえば、「スキルを広げたい」「経営に近い仕事を経験したい」といった目的があるなら、現在の職場でその目標が達成できる方法がないか検討してみましょう。
それでも現職で実現が難しいと感じた場合は、キャリアの方向性を見直し、転職を視野に入れるのも一つの手です。副業がしやすい柔軟な環境や、複業・独立支援制度を整備している企業も増えてきており、自分に合った働き方を実現するための選択肢は広がっています。
まとめ
公認会計士にとって、副業は単なる収入源にとどまらず、キャリアの選択肢を広げる有効な手段となり得ます。もちろん、就業規則や競業避止義務、独立性・利益相反といった会計士ならではの注意点を踏まえた慎重な判断が必要です。
オンライン経理サポートや社外CFO業務、教育・執筆など、会計士の専門性を活かせる副業は多く存在し、それらを通じて得た経験は転職・独立・キャリアチェンジにもつながります。
もし現職で副業が難しい場合でも、自分の志向や働き方を見つめ直すきっかけとして、副業という選択肢を前向きに捉えることが重要です。自分に合った環境や働き方を実現するために、会計士のキャリアに特化したエージェントであるVRPパートナーズの活用も、将来を見据えた一手となるでしょう。